日本のSF作家によるノンテーマのアンソロジー本、『ノヴァ』を読みました。
僕はアンソロジー本というのは、よっぽど好きな作家でもいない限り買わないのですが、
この本は作家のチョイスが僕の直球ド真ん中。
円城塔! 小林泰三! 田中哲弥! 田中啓文! 飛浩隆! 牧野修!
何このストライク率。五割越えだと……。
そんなわけで、各短編について短いですが感想。
「社員たち」北野勇作
なるほど、こういうのをペーソスというのか。哀愁ただよう6ページ。
「忘却の侵略」小林泰三
不確定な敵というアイディア自体はよくある気もするけど、
それへの解決法が論理的で面白い。
「エンゼルフレンチ」藤田雅矢
名前に見覚えがあると思ったら、「星の綿毛」の人だった 。
この人の文は読んでてなぜか照れる。嫌いじゃないんだけど。
「七歩跳んだ男」山本弘
アポロ計画の陰謀説をギミックにしたもの。SFというよりミステリー。
人類は月へ行っていない云々と言い出す人対策に。
「ガラスの地球を救え」田中啓文
こんなものを憶面もなく書いてしまう田中啓文先生が、僕は大好きです。
「隣人」田中哲弥
田中姓のSF書きは脳にターボエンジンでも積んでんのか。
田中啓文の「異形家の食卓」を思わせる悪趣味ぶり。
「ゴルコンダ」斉藤直子
「隣人」を読んだ後なのですごいホッとした。
ほのぼの枠。タイトルはマグリットの絵から?
「黎明コンビニ血祭り実話SP」牧野修
ここから怒涛の「記述」三連発。脳みその処理能力オーバーに注意。
ものすごいシリアスなのに、いきなりどうしようもないギャグを入れてくるあたりが牧野修。
「Beaver Weaver」円城塔
わけがわからない。わからないのに面白い。悔しい。
数学をやっている人ならもっとわけがわかるんだろうか。
「自生の夢」飛浩隆
この人が書くと知ってこの本を買った。
物語の美しさは言うまでもなく、現実から地続きの未来の設定を考えついて物語に生かす構想力がすごい。
SFマガジン2月号にも小説が載るらしいので楽しみ。
「屍者の帝国」伊藤計劃
絶筆のため未完。伊藤計劃は読んだことなかったけど、面白そう。
期待を裏切らない、大当たりな出来の本でした。
最近ごぶざただったSF熱が再発しそう。
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